瓦屋根、防水工事の費用や相場について
瓦屋根は屋根材の中でも一般的なもので、比較的長期間にわたって耐久力がある素材です。とはいえ永久に雨風から家を守ってくれるわけではありません。
時には雨漏りなどの不具合を避けて通ることができません。
瓦屋根の防水工事には、漆喰塗り工事や瓦屋根防水シート交換など、いくつかパターンがありますが、ケース別でその費用感について解説します。
瓦屋根修理の場合
雨漏りなどの不具合が発生した際に、修理が必要になります。雨漏りは基本的に放置しても自然に治るなどということはありません。
雨漏りの原因や修理方法、範囲などにより修理費用は大きく左右されます。
代表的な修理内容としては、
- 谷部など雨仕舞い修理
- 棟の修理
- 漆喰の補修
- 瓦の部分修理
といったものがあります。
仮に一般的な木造住宅として、建物の坪数としては30坪台(90から110㎡程度)、屋根面積は20坪台、60から70㎡程度とします。平均的な費用としては、
- 谷部など雨仕舞い修理・・・5から10万
- 棟の修理・・・10から40万
- 漆喰の補修・・・10から50万
- 瓦の部分修理・・・5から20万
ほかに、瓦とは直接関係ないものとして、雨樋などがあります。雨樋は、軒樋や役物を一部交換するなどの修理とすると、10万から15万くらいです。
※仮設足場については、作業内容によって要不要がありますので別途とし、作業及び資材費用としています。
参考事例:棟瓦積み替え工事
参考事例:棟瓦 漆喰塗り工事
屋根葺き替えの場合
瓦自体が寿命を迎えているなど、全体的に葺き替えるケースです。このケースでは、瓦の下の防水シート、いわゆるアスファルトルーフィングは新しいものに替えるとして、さらにその下の野地板も交換するかどうかは状態により変わります。
また、瓦は大丈夫で防水シートだけを交換する、葺き直しという方法もあります。屋根形状や、導入・搬出経路、などにより費用も左右されますが、平均的な費用としては、
- 葺き替え・・・150から230万
- 葺き直し・・・110から180万
葺き替え、葺き直し共に仮設足場は必要になるため、費用に算入しています。
もちろん、選択する瓦の種類にもよります。
葺き替え、葺き直し共に作業日数がかかります。
参考事例:日本瓦葺替え工事(日本瓦からディーズルーフィング社エコグラーニに葺替え)
瓦屋根、防水工事の工期について
それぞれにかかる工期についても、屋根の大きさや形、修理方法などによって大きく変わりますので、平均的な目安として考えてください。
- 谷部など雨仕舞い修理・・・1日から2日
- 棟の修理・・・2日から1週間
- 漆喰の補修・・・1日から4日
- 瓦の部分修理・・・1日から5日
※仮設足場の設置、撤去期間は考慮されていません。足場が必要な場合は加算されます。また、雨樋の修理、一部交換は1日から3日程度です。
全面的に葺き替える、または葺きなおす場合では、1週間から2週間程度の工期をみておいてください。ただし、どちらも天候に左右されます。雨天時には原則作業できませんので、そのぶん工期は延長する可能性があります。
防水工事時に心配な点(追加費用・天気)
工事規模の大小に関わらず、依頼して工事してもらう際にはトラブルが気になるところです。心配な点をまとめました。
追加費用は請求されないのか
「めくってみたらひどく傷んでいた」「これも交換したほうがいい」などと、業者から追加工事の要求を受けた、という話はよく耳にします。たしかに、下地などの目に見えない部分は、業者も工事が始まってみないとわからない箇所というのはあります。まして、素人が予測できるものではありません。
しかし、あまりにも追加の費用が多額であれば困惑してしまうでしょう。支払えないほどの金額ということで、断った場合、そのまま工事を進められるのか、進められてものちのち大丈夫なのか、素人が判断することは困難です。
まずは、見積もりの工事範囲をよく確認することです。そして、必ず契約前に「追加費用の可能性があるのか」、について業者に確かめることが大切です。その結果、追加費用がないに越したことはありませんが、業者としては絶対ないとはいえませんし、絶対ないと言えるまで見積もりに算入すればかなり割高な金額になるはずです。
工事後に再見積もりをして受注金額の減額をするなどお客にとっても面倒な作業になります。「追加費用がないとはいえないが、あったとしてもこのくらいまで」という目安くらいを確かめておきましょう。
天気は大丈夫か
屋根に関する工事では、天気は作業を左右する重要なタイミングになります。1日か2日で終わる修理であれば、その間だけ晴れる日が続けばいいので、前日の天気予報で事が足りますが、葺き替えとなるとそう簡単ではありません。雨が降る直前に瓦をめくってしまえば、屋内への雨漏りのリスクはあがります。
しかし天気に関しては業者も慣れていますので、ある程度晴れが続く日程に合わせて工程を組むのが通常です。ただし、念のため屋内に置いてある濡れてはいけないものなどは避難させておくことをおススメします。場合によっては畳の部屋などはブルーシートを敷いておくか、畳をあげてしまってもいいでしょう。
足場は必要か?(部分足場で対応可能かなど)
足場についての参考事例:スレート屋根塗装・外壁塗装工事 【施工事例:135】町田市T様邸のページより
足場というのは、工事期間だけ一時的に建てる仮設足場のことです。主に高所作業になる場合に設置され、作業員の足場、昇降、資材の上げ下ろしに使われます。形に残ることのないものですが、設置、撤去にはそれなりの費用がかかるため使用せずに工事できるに越したことはありませんが、安全上、または質の高い作業の確保には欠かせない面もあります。
修理の場合
修理の場合は、足場なしで施工が可能なケースがあります。部分的な補修などの場合で、軒先へ梯子をかけることができ、勾配が強くない屋根であれば、作業員は屋根面を移動して目的の補修を完了させることができます。それができないケースだとしても、全面的に足場をかけなければならないことは少なく、部分的な足場で可能な場合がほとんどです。
漆喰の補修などで、作業箇所が広範囲にわたるケースでは、作業時間と足場のコストパフォーマンスで判断します。
葺き替えの場合
葺き替えや葺き直しの場合では、基本的に全面的な足場設置が必要になります。作業効率や安全面だけでなく、資材の上げ下ろしも多くなるためです。
樋の一部交換などでは、梯子や脚立で対応可能かどうかがポイントになります。数メートルにわたる工事範囲であっても、足場面がさほど高い位置にならなければ、脚立のあいだに板を渡して簡易的な足場として使うこともできます。
瓦屋根が雨漏りした原因とその対策
瓦屋根で25年から30年経つと、雨漏りがした、というケースをよく聞きます。雨漏りというと、瓦が劣化したか、割れたりズレたりしてその隙間から浸水したと考えるのが普通でしょう。たしかにそういったケースもあります。
しかし、瓦自体が寿命を迎えるにはやや早い年数でもあります。では、原因はどこにあるのでしょう。
瓦屋根防水シート交換・漆喰塗り工事
瓦屋根は瓦だけで作られているわけではなく、様々な副資材によって出来上がっています。それは、防水シートと漆喰(しっくい)です。漆喰が劣化して雨水が浸入し、防水シートも劣化していると、雨漏りの原因になります。
漆喰の参考事例:シルガード(「棟瓦 漆喰塗り工事 【施工事例:114】相模原市O様邸」のページより)
また、漆喰が劣化していなくても、台風や暴風雨の際は瓦の隙間から雨水が浸入することもあります。
瓦自体がズレたり割れたりして傷んでいなくても、雨漏りの可能性はあるのです。
防水シートの参考事例:下地防水シート田島ルーフィングタディスセルフ(「スレート屋根カバー工事【施工事例:155】屋根の防水シート 耐用年数」のページより)
防水シートはアスファルト・ルーフィングといわれるものが使われることが多く、寿命は20年程度といわれます。それ以上の年数が経過した屋根を葺き替えるために瓦を取り除いてみると、古くなったアスファルト・ルーフィングが出てきますが、全体的にパリパリに乾いて、ところどころに穴も開いて、触るとパラパラと割れてしまいます。
完全に劣化していることがわかります。これでは、瓦の隙間から入った少量の雨水でも防ぐことはできません。
瓦屋根の防水シートから雨漏り
防水シートは野地板の上に貼られていて、防水シートを通過した雨水は野地板に染み渡ります。その下には野垂木がありますが、一定の浸水量を超えてしまうと天井や柱に水が落ちたり伝わったりして、最終的に室内へ流れ込みます。
もし一度の浸水量が少なくても、何度も繰り返すうちに野地板は腐食して、傷みが進行します。瓦屋根に使われている瓦の耐久性が50年以上あったとしても、瓦の下の防水シートのほうが先に寿命がきてしまいます。
以前の瓦屋根の防水シートとは
防水シートが一般的に使用される以前は、葺き土の上に瓦を並べていくという方法でした。葺き土は主に瓦を固定する役割で、葺き土の下には杉皮が敷かれていて、これが現在の防水シートになっていました。
杉皮は薄い杉の樹皮で、何枚も重ねて敷かれており、硬さがあるため野地板は敷き詰めずに間隔をあけて「スキ野地」という工法もあったほどでした。杉皮は手間もかかり、葺き土は重量があるため現在は使われることは少なく、防水シートと桟木止めの工法が主流になりました。
瓦屋根の防水シート対策は
アスファルト・ルーフィングなどの防水シートは寿命があり、永久に使えるものではありません。瓦の防水をかいくぐり、少しずつ侵入した雨水による劣化・穴あきなどは避けられず、放置しておくと腐食が進み雨漏りに至ります。
防水シートは瓦の下にありますので、状態を確認するには瓦をはがすことになります。雨漏りの箇所が特定できていればその周辺を確認すればいいのですが、そうでなければ広範囲の瓦を触ることになります。
防水シートの平均的な耐久年数は20年程度のため、施工から15年〜20年を目安に防水シートの貼り替え、もしくは屋根の葺き替えを検討しましょう。
防水シートの貼り替えについては、範囲によって大きく手間と費用は変わってきます。程度の差はあれ、瓦を一時的に撤去する必要があります。防水シートには、アスファルト・ルーフィングだけでも種類があり、他にも塩ビシートやゴムシートなどもあります。
それぞれで費用も変わってきますので、予算や耐久年数に合わせて検討しましょう。
防水工事後のチェックポイント(保証)
修理工事や葺き替え工事が終わったら、ひと通り写真を撮っておくことをおススメします。もし、施工後まもなく不具合が発生した場合、不具合発生前と発生後とで屋根に変化があるかどうかを確かめるためです。
たとえば瓦が割れていたとすると、はじめから割れていたのか、最近になって何かが飛来して割れたものか、区別をつけるためです。
また、もし不具合が発生した際のために保証という制度もあります。屋根の保証は一般的にいって、大きく3つにわかれます。
施工保証
施工保証は、工事の受注業者が定めた保証です。特に修理で保証を付けるケースではこれがメインになります。施工保証を求める場合は早い段階で意志を伝え、施工後は書面で保証書を発行してもらい、交付してもらいます。ただし、修理の場合は施工保証が付いたとしても短期間です。
葺き替えのケースでは、10年程度の保証期間が一般的です。
メーカー保証
メーカー保証は、屋根材を製造したメーカーが定めた保証です。屋根材としての性能を保証するものなので、施工に不具合があったケースでは保証対象にはなりません。
材料や製品によって保証期間には差があります。瓦屋根の場合では保証をつけているメーカーは少なめです。金属屋根の塗装に関しては塗料メーカーの保証がつくケースがあります。塗料の性能などによって保証期間が定められています。
ただ、塩害や大気汚染など通常の使用環境外では保証対象外になることがあります。
法的な保証
新築時の屋根の場合、10年間の瑕疵担保責任が法律で定められています。新築し、引き渡ししてから10年間は、雨漏りの発生など目に見えない隠れた不具合が原因と認められれば、修理や補償を求めることができます。
これは屋根の性能に関わらず建物全体についての瑕疵担保責任です。リフォームの場合、瑕疵担保責任は適用されませんが、民法で1年間の保証期間が定められています。
保証の注意点
いずれの保証パターンであっても、地震や台風で受けた自然災害による被害は保証対象になりません。この場合は保険の範疇に該当するため、加入している火災保険などの損害保険の利用になります。
防水工事の近隣挨拶について
(必要か不必要か?音がうるさいなど)
近隣挨拶が必要なケースと範囲について
防水工事でも一定以上の規模になると、工事期間も取られますし解体などで騒音や粉塵の飛散も考えられますので、その場合は近隣へ挨拶にまわった方がいいでしょう。
挨拶にまわる範囲は、原則的には土地に接しているお宅になりますが、ケースバイケースで道路を挟んでいるお向かいさまでも挨拶に行きましょう。
近隣挨拶の方法とタイミング
できれば工事の担当者と一緒にまわり、ペーパー1枚でいいので工事概要と予定工期が記載されたものを配る方が安全です。工事の担当者に言えば用意してくれます。粗品などは特に必要ないと言えますが、明らかに迷惑をかけると分かっている場合は渡した方がいいでしょう。
その場合でも小さめの菓子折りで充分ですし、近隣挨拶用のタオル1枚など、施工業者に相談すれば何らかの形で適切なものを用意してもらえます。タイミングは工事開始の1週間から10日前くらいがベストです。
自然災害での被害復旧には火災保険や共済を利用しましょう!
保険でカバーできる被害は
最近は台風や洪水が多く発生しています。自然災害が原因で屋根が破損した場合、火災保険や共済で補償を受けることが可能です。たとえば、
- 台風や暴風で屋根が破損、飛散
- 屋根に積もった大雪の重さで破損
- 雹(ひょう)や霰で屋根が割れた
- それらの雨漏りによって被害が出た
このような被害であれば火災保険で補償される可能性があります。
強風による火災保険申請の参考事例:「町田市 スレート屋根 ドローン確認【施工事例:146】 屋根や外壁の火災保険申請も致します」のページより
積雪事故による雨樋の火災保険申請の参考事例:「火災保険 雨樋交換工事 町田市 【施工事例:111】H様邸」のページより
被害以外の条件は
これらの原因と被害以外の適用条件には、
- 被害が発生してから3年以内
- 被害状態の写真、修理後の写真などが必要
- 修理にかかる金額が20万円以上
といったものが主にありますが、加入している保険にもよりますので確認が必要です。また、全額ではなく工事費用、修理費用の何割かが対象になるというケースもあります。